人間が本質的な幸福を感じるとき、それは単なる一時的な喜びではなく、より深い内面的な満足感や安定感に根ざしたものかもしれません。Jeffery A. Martin博士の研究では、この根本的な幸福を「非象徴的体験(PNSE)」として明確化し、そのプロセスをいくつかの"場所"や"レイヤー"で説明しています。本記事では、この「根本的な幸福」の種類や、その階層的な構造についてご紹介します。
根本的な幸福(PNSE)は、単なる物質的・一時的な幸福感ではなく、「すべてが根本的に大丈夫である」という深い安心感をもたらす体験です。この体験は、古くから宗教的、霊的な文脈で報告されてきましたが、現代においては科学的にもその重要性が見直されつつあります。Martin博士は、様々な人々が報告するこの体験を、具体的なプロセスとして「場所(Location)」や「レイヤー(Layer)」という概念で分類し、私たちが辿る可能性のある内面の旅を明らかにしました。
Martin博士の研究では、根本的な幸福に至るプロセスを"場所"という段階に分けています。これらの場所は、個々人の意識の変容と自己感覚に応じて異なり、深まりと共に新たな認識の状態が開かれます。
最初の段階である「場所1」では、自己中心的な思考や感情の起伏が和らぎ、根本的な安心感が日常的なバックグラウンドとして感じられるようになります。この段階では、「すべてが大丈夫である」という感覚が芽生え、不安やストレスが軽減されます。
「場所2」では、自己と他者、自己と環境との境界が薄れ、自己の感覚が統合されます。主体と客体が消え、ただ「存在」しているという感覚が強まり、世界との一体感が増します。選択をする際の「正しさ」や「直感的な導き」が自然に感じられるようになります。
「場所3」に到達すると、ネガティブな感情が完全に消え去り、深い慈悲や喜び、無条件の愛が支配的になります。この段階では、日常生活が安定し、満たされた感覚が持続するため、現実がそのままで完璧であるように感じられます。
「場所4」では、自己関連の思考や感情、行為の感覚が消失し、人生がただ「展開していく」ものとして認識されるようになります。主体や意図の感覚が消え、「自分が行っている」というよりも「起こっている」感覚が支配的です。
「場所5」以降は、さらに深い意識の探求が進む領域です。これらの段階では、視覚や感覚の変容がより顕著になり、自己感覚の根本的な変化や再統合が進行します。「場所5」から「場所9」に至るまで、個人が経験する意識の変容はさらに高度化し、伝統的な意識の枠を超える報告もされています。